「歩行能力」は、日常生活において重要な能力であり、衰えを感じるととても不安になるでしょう。特に歩行速度の低下は死亡リスクとの関連も強く、軽視しないことが大切です。
そこでこの記事では、歩行能力低下の原因を紹介するとともに、その対処法・予防法までをご紹介します。
歩行能力低下のおもな原因は「加齢」です。特に足の衰えは大きく「老化は足から」といわれるように「下肢の衰えの低下率は上肢に比べ3倍大きい」ともいわれます。
そこでここでは、歩行能力低下の詳しい原因と、加齢にともなう高齢者の歩行能力の特徴について解説します。
歩行能力低下の原因として考えられる「加齢」ですが、より詳しくいえば「加齢による下肢の筋量の減少」が原因です。
老化によって自然と筋肉量が減っていくと、歩行も含めた身体全体の活動量が減ってしまいます。そして、それがさらなる筋肉量の減少を招いてしまうのです。この負のスパイラルが加齢による歩行能力低下の最たる原因です。
一般的に歩行能力は65歳以上で徐々に低下が見られ、男性では80歳以降、女性では男性より5年早い75歳以降から日常生活にも支障をきたすようになるといわれています。年齢はあくまで目安のため、これまでの食生活などの生活習慣や他の疾患との兼ね合いで早くなったり遅くなったりすることがあります。
高齢者の歩行と聞くと、どのような歩行を想像するでしょうか。高齢者の歩行の特徴は以下の5つが挙げられます。
これらはすべて、歩行能力低下の原因である「加齢による下肢の筋量の減少」によって引き起こされる歩行の特徴です。
歩行能力には2つの指標が存在します。感覚で歩行能力を判断するのではなく、指標をもとに客観的な判断をするようにしましょう。
フレイルとは、「加齢により心身が老い衰えた状態」を指す指標です。基準にはさまざまなものがありますが、最もよく採用される基準は次の5項目です。
この5項目のうち3項目以上該当する場合は「フレイル」、1~2個の該当に留まる場合は「プレフレイル」であると判断されます。
フレイルは、以下のような多くの要因が複雑に合わさることで起こりやすくなります。
このように、フレイルは決して身体的変化だけでなく、社会的人間関係の喪失など精神的・社会的変化も影響して起こるのです。
サルコペニアは、「加齢による筋肉量の減少と筋力の低下」を指す指標です。つまり、フレイルよりもさらに狭い指標であり、一般的にはサルコペニアが起こり、その他複数の原因と合わさることでフレイルとなります。
サルコペニアになると、筋力の低下により日常的な歩く・座るなどの動きが苦痛となり、要介護状態となったり、簡単な歩行でも転倒しやすくなったりといった症状が目立つようになります。 また、サルコペニアはさまざまな疾患の重症化リスクや生存期間にも影響を与えることがわかってきました。
サルコペニアは、加齢によるさまざまな心身の変化によって引き起こされます。原因となる症状例は、以下のとおりです。
これはあくまで一例ですが、フレイルと同様、加齢により引き起こされる症状が多いことがわかるかと思います。そのため、65歳以上の高齢者のうち実に15%程度がサルコペニアを発症しているともいわれます。また、女性より男性のほうが発症しやすいという特徴もあります。
続いて、歩行能力を向上させる方法を「フレイル」と「サルコペニア」のそれぞれの改善という視点から解説します。
フレイルのおもな原因は、サルコペニアと栄養不良であることが多いです。
サルコペニアの改善には、骨格筋の形成とその維持が最も大切。そのためには、十分なタンパク質を摂取すること、そしてタンパク質の合成を促すレジスタンス運動を行なうことが効果的です。
レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける運動のことで、具体的にはスクワットや腕立て伏せなどの運動を指します。 レジスタンス運動を習慣的に行なうと同時に、同じくタンパク質の合成を促すアミノ酸を経口摂取することで、さらなる歩行能力向上に効果が見られるでしょう。
栄養面で大切なことは、以下の点です。
フレイルの改善には、上記のような食事を心がけることが大切です。実践して筋肉の素となる栄養の摂取と筋肉が育つための健康な身体作りを行ない、さらにレジスタンス運動で骨格筋を形成・維持していきましょう。
サルコペニアもフレイルと同様、運動と栄養の2面から改善を図ることが可能です。
運動においてはフレイルと同様レジスタンス運動が効果的ですが、特に抗重力筋と呼ばれる筋肉を鍛えることが大切です。抗重力筋とは、重力に抗って直立姿勢を保つために必要な筋肉のこと。抗重力筋のなかでも特に大きな筋肉である太もも全面の筋肉とお尻の筋肉を意識して鍛えましょう。
また、こうしたレジスタンス運動とウォーキングや水泳などの有酸素運動を組み合わせることも非常に効果的です。有酸素運動を行なう際は、軽く息が弾む程度の低強度有酸素運動を心がけましょう。
栄養に関しては、フレイル同様タンパク質が最も重要です。サルコペニア対策として一日に必要なタンパク質量は「体重×1.2~1.5kg」です。特にタンパク質が少なくなりがちな朝食や昼食で意識して摂取しましょう。
歩行能力は食事改善やレジスタンス運動などのセルフトレーニングでも改善を図ることができますが、進行度合いによっては自分での改善が難しく、病院などでのリハビリを頼るべき場合もあります。
そこでここでは、リハビリを通して歩行能力を向上させる方法を解説します。
おもに以下の2つに当てはまる場合、リハビリが必要です。
この場合、セルフトレーニングであるレジスタンス運動などではすでにこれ以上の歩行能力向上が見込めなくなってしまっている場合が多いです。また、怪我などにつながる恐れも大きいため、無理な運動は控えるべきでしょう。
このような歩行状態でも、リハビリで適切に補助器具を使用することにより歩行能力向上を見込むことが可能なため、リハビリに切り替えることをおすすめします。
リハビリの初期では、以下の3種類の器具を必要に応じて用いて、関節の可動域を維持・拡大する訓練を行ないます。
医療機関でのリハビリでは、平行棒を使用したリハビリが多いのが特徴です。平行棒を活用して負担を軽くしたうえで、レジスタンス運動に近い運動を行ない、安定した歩行の獲得を目指します。
T字杖などは、片足または両足が麻痺していて正しい歩行が難しい場合に使用することが適切です。
片足が麻痺している場合の歩行様式、つまり杖と足の出し方は3通りあり、
という順番で杖と足を出すようにします。
両足が麻痺している場合の杖と足の出し方は、
大振り歩行……両杖→両足
という順番で杖と足を振り子の様に出します。
キャスター式歩行器は、立つことが不安定な方や腕に力を入れられない方などが自分で歩行するための補助器具として使用します。後ろ脚にストッパーが付いており、体重をかけるだけでストッパーがかかり、止まるように工夫されているので安心して使えます。
近年では、「歩行能力訓練ロボット」と呼ばれる器具が注目を集めています。
先ほどご紹介した補助器具は、ある程度の体力や歩行能力が残っていないと効果を得られにくいものです。一方、歩行能力訓練ロボットは、患者の全身をサポートしたうえで効率よく下肢の必要箇所に負荷をかけることができるため、無理なく効率的に歩行能力改善を見込めます。
ただし、2022年7月時点では一部を除き保険の適用外となっているため、一刻も早く国や自治体による助成金の整備が求められている状況です。
歩行能力は、なるべく早くその予防を始めたほうが効果的です。ここでは、歩行能力低下の予防方法を「フレイル」と「サルコペニア」に分けてご紹介します。
フレイルを予防するには、以下の3点を意識する必要があります。
そのためには、以下6点に気を付けることが大切です。
1.感染症の予防をする
高齢者は免疫力が低下しているため、感染症にかかりやすくなっています。感染症がきっかけで寝たきりになってしまう可能性もあるので、気を付けましょう。
2.日々運動をする
生活習慣病の予防や運動能力低下の予防には、日常的な運動が欠かせません。
3.栄養バランスを考えて食事をする
栄養が足りない状態は、最もフレイルとなりやすい要因の一つです。
4.口腔ケアをする
食べる機能の低下は、低栄養の原因ともなります。そのため、日頃から口内環境を保つように意識しましょう。
5.持病がある方は、悪化させないように配慮する
慢性疾患のある場合、まずは持病を悪化させないことが大切です。
6.社会とのつながりを持つ
社会とのつながりが絶たれると、外出する機会や気力が失われ、結果的に日常的な運動が減少してフレイルに陥りやすくなります。
また、社会的立ち位置が変わることで活気が失われてしまうことも、フレイルの一つの原因となります。
サルコペニアの予防には、以下の2点が大切になります。
運動を習慣化する際は、最初にウォーキングやラジオ体操などの簡単に取り組めて無理のない運動から取り組みましょう。 これまでご紹介したレジスタンス運動などは、筋肉量や筋機能を回復するのに効果的ですが、これまで運動の習慣がない方にとっては少しハードルが高い運動です。慣れるまでは軽い運動から始めましょう。
タンパク質の摂取は、摂れそうな食材から無理なく摂取することが大切です。普段食べ慣れていないものを無理に食べると、長く続きにくいでしょう。継続することが大切なので、食事に採り入れやすいものから食べましょう。
なお、筋肉をつけるうえでは、大豆などの植物性タンパク質より、肉や魚などの動物性タンパク質のほうが高い効果を得られるとされています。バランスが大切ですが、食事の際は意識してみてください。
日頃デスクワークが中心だったり、車や公共交通機関での移動が多く、歩く時間が少なかったりすると、脚筋は衰えていきます。また、姿勢が悪かったり、膝を伸ばして歩いていたりと間違った歩き方をしていても、同様に衰えてしまうものです。
そのため、なるべく早いうちから正しい脚の使い方を意識するとともに、歩く習慣を付けるようにしましょう。数ある脚筋のうち、中高年からのトレーニングで重要なのは以下の5つの脚筋です。
また、85歳以上の高齢者の方はハムストリングスを鍛えると効果的です。年齢に応じて、必要な筋肉を正しく鍛えることを意識してください。
足腰の衰え、特に歩行能力の衰えを感じた場合、まずは病院を受診して適切な改善方法を判断してもらうのが基本となります。ただし、継続的に受診する時間が取れない人や、明らかな筋力低下を感じるという人は市販薬やサプリメントを使う手もあります。
『歩かんとⓇ』は、筋力低下で悩む50代以上の人のための機能性表示食品。筋肉・骨組成をサポートする成分をバランスよく配合し、中高年の方の歩く力を維持する効果が報告されています。 機能性表示食品のため、飲み忘れなどなく好きなときに飲めるのもうれしいポイントです。
今回の記事では、歩行能力の低下の原因やその指標、歩行能力改善・予防の方法やリハビリの方法について解説しました。歩行能力の低下は日常生活を快適に送るにあたって、大きな問題となることがあります。
今回ご紹介の内容を参考に、正しい方法で歩行能力向上のための食事・運動に取り組んでみてください。
また、『歩かんとⓇ』は筋力低下で悩む50代以上の人のための機能性表示食品です。筋肉や骨組成をサポートする成分を配合しており、中高年の方の歩く力を維持する効果が報告されています。歩行能力にお悩みの方はぜひ一度購入を検討してみてください。
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